建設業の一人親方は今後どうなる? インボイス制度の影響とキャリアプランを解説


皆さんこんにちは。長野県長野市を中心に、総合建築工事業を手掛けている株式会社美喜工務店です。


建設業界では、特定の企業に所属せず「一人親方」として働いている方も大勢います。一人親方は個人事業主(いわゆるフリーランス)で、企業に所属せず自由な働き方ができるのが魅力です。


しかし最近では、2023年10月からの「インボイス制度」の導入をはじめ、一人親方にとって不利益となる変化が増えています。今後、一人親方はどのような働き方をすべきなのでしょうか? ここでは、インボイス制度が一人親方に与える影響や、導入後のキャリアプランについて解説します。




■建設業の一人親方が抱えている問題や今後危ないといわれる理由



一人親方はフリーランスという立場であるために、会社員として働く人たちとは異なる問題を抱えています。近年特に注目されているのは、以下の2つの問題です。



◯偽装一人親方問題

偽装一人親方とは、企業に雇用されている会社員と同じ働き方をしているにもかかわらず、契約上は一人親方として仕事を請け負っている状態になっていることです。いわゆる「偽装請負」に当たります。


会社が偽装一人親方という形を取る目的は、社会保険料の負担を免れることです。近年、国は建設業界の働き方改革を進めており、令和2年10月からは建設業許可の要件として社会保険への加入が義務付けられました。


しかし、従業員を社会保険に加入させると、会社は社会保険料を負担しなければなりません。そこで、契約上は一人親方という扱いにすることで、社会保険料の負担を免れようとする悪質な会社が出てきたのです。


国もこのことを把握しており、偽装一人親方をなくすための対策を講じています。効果が現れれば、偽装一人親方は減っていくでしょう。したがってこの問題は、一人親方という働き方そのものを揺るがしているわけではありません。



◯インボイス制度の導入

もう1つの大きな問題は、2023年10月から始まる「インボイス制度」です。インボイス制度が導入されると、一人親方は収入が減る可能性が高く、「もう一人親方を続けるのは無理なのでは?」などと心配する人も増えています。以下の項目では、このインボイス制度について詳しく解説します。




■インボイス制度とは?



インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、売手が買手に正確な消費税額などを伝えることを求める制度です。2019年10月1日から軽減税率制度が導入されて以降、商品やサービスによって消費税率が異なるケースが出てきました。それに対応するため、2023年10月1日からインボイス制度が導入される予定なのです。


インボイス制度がスタートすると、売手(下請け)は買手(元請け)に対し、従来の区分請求書に替わる「インボイス(適格請求書)」を交付する必要があります。インボイスは従来の区分請求書の内容に、適用税率や税率ごとの消費税額、適格請求書発行事業者の登録番号などが追加されている書類です。


そして、下請けと元請けの両方がインボイスを保存しておくことで、元請けは消費税の仕入税額控除を受けられるようになります。つまり、売上時の消費税額から仕入時の消費税額を差し引けるようになるので、その分消費税の納税額を減らせるのです。


ただし、インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限定されています。そして、適格請求書発行事業者になれるのは、消費税を納める義務を負う「課税事業者」のみです。基本的には、2年前の売上が1,000万円を超えていると課税事業者に、1,000万円以下だと納付の義務がない「免税事業者」になります。


また、売上が1,000万円以下の事業者でも、税務署に登録申請をすれば課税事業者となり、適格請求書発行事業者として登録することが可能です。ただし、課税事業者になれば、もちろん消費税を納付しなければなりません。


つまり、インボイス制度というのは事実上、一人親方に対して「売上に関係なく消費税を納税するか、インボイスを発行できない事業者として活動するか」の二択を迫っているのです。次の項目では、これが具体的にどのような影響をもたらすのかを見ていきましょう。




■インボイス制度が一人親方に及ぼす影響



インボイス制度は、一人親方の働き方に多大な影響を及ぼします。免税事業者のままでいる場合と、制度に対応して課税事業者になる場合に分けて、それぞれどのような影響を受けるのかを見ていきましょう。



◯免税事業者のままでいる場合

インボイス制度の導入後も免税事業者のままでいる場合は、以下のような影響が考えられます。


・仕事が減る可能性がある

免税事業者のままでは適格請求書発行事業者になれず、元請けに対してインボイスを発行できません。つまり、元請けは仕入税額控除を受けられず、仕入れ(一人親方への発注)にかかった消費税分を納税しなければならなくなります。


こうなると元請けは損をするだけなので、免税事業者との取引を避け、インボイスを発行できる課税事業者に優先して仕事を発注するようになるでしょう。その結果、免税事業者は仕事が減ってしまう可能性があります。



・取引額を値引きされる可能性がある

免税事業者のままでいた場合、元請けは仕事を減らすのではなく、代金から消費税分の値引きを要求してくる可能性があります。消費税を肩代わりするように言われているのと同じです。これを受け入れると、単純に消費税分の収入が減ってしまいます。


もちろん、一方的に値引きをするのは、独占禁止法や下請法に違反する行為です。そのため、交渉もなしに値引きをされてしまうわけではないのですが、値引きに応じなければ仕事の量を減らされてしまう可能性が否定できません。



◯課税事業者になる場合


インボイス制度に対応するために課税事業者になった場合は、以下のような影響が考えられます。


・収入が減る可能性がある

課税事業者になった場合は、当然ながら消費税を納める必要があるため、以前と同じ売上では消費税分の収入が減少してしまいます。現在の消費税は10%ですから、年間の売上が1,000万円の人なら、単純計算で90万円程度も納税額が増えてしまう(収入が減ってしまう)計算です。


当面は経過措置が用意されているので、いきなりこれだけ収入が減少してしまうわけではないのですが、「将来的にはこうなる」と考えなければなりません。生活に大きく影響するのは必至ですから、今のうちに対策を考えておく必要があります。



・事務作業の負担が増大する

課税事業者になると、消費税を正確に納付するために、いろいろな事務作業を行う必要があります。たとえば、領収書の保存や記帳作業、税額計算などです。こういった事務作業の負担は馬鹿にならず、特に税額計算は手間がかかります。


しかも、事務作業に時間を取られていると、その分仕事ができなくなるため、結果として収入減少につながる可能性もあります。一人親方であれば、これまでも経理などの事務作業は自分で行ってきたはずですが、新しい作業が増えるのは想像以上に面倒なので注意が必要です。




■建設業の一人親方は今後どうしたらいい?



インボイス制度が導入されると、一人親方は非常に厳しい状況に置かれます。今後も安定して働くためには、一体どうすればいいのでしょうか? インボイス制度導入後の、一人親方のキャリアプランについて考えてみましょう。



◯免税事業者と課税事業者のどちらかを選択する


一人親方のままでいる場合は、課税事業者になって消費税を納めインボイスを発行するか、免税事業者のままでいるかを選択することになります。どちらを選んでも負担が増える可能性が高いため、それぞれのデメリットに合わせた対策を打っておかなければなりません。


まず、免税事業者のままでいる場合は、元請けから受注できる仕事の量が減るか、消費税分の値引きを要求される可能性があります。現状と同じ条件で仕事を受け続けるためには、元請けとの交渉が必要不可欠です。


とはいえ、「仕事の量は減らさないで」「値引きにも応じない」とお願いするだけでは、おそらく受け入れてはもらえません。そのため、自分の技術力や他の業者との違いをアピールし、元請けが消費税を負担するだけの価値があると認めてもらえるよう努めましょう。


一方、課税事業者および適格請求書発行事業者になる道を選ぶ場合は、消費税の納付によって収入が減少する分を補填しなければなりません。今までと同じ売上を維持するためには、受注する仕事の量を増やすか、取引額をアップしてもらう必要があります。


そのためには、やはり元請けとの交渉が必要です。実のところ、課税事業者になっても免税事業者のままでいても、やるべきことにあまり差はないともいえます。納税に伴う事務作業の負担が増大する件については、税理士などの専門家のサポートを受けるとともに、自分でも少しずつ知識を身につけていきましょう。


ちなみに、メインの取引相手が個人や免税事業者の場合は、そもそもインボイスを発行する必要がないため、免税事業者のままでもあまり問題ありません。自分がどういう人を相手にしているのかを再確認し、取引先の意見も聞いてみることが大切です。



◯会社員に転職する


第3の選択肢として、会社員に転職するという道もあります。つまり、フリーランスである一人親方をやめ、企業に所属して働くのです。


会社員は一人親方と違って、何でも自分で決められるわけではありません。しかし、一人親方よりも安定して働きやすく、面倒な事務作業をする必要もないなど、メリットもたくさんあります。一人親方として働いてきた経験も重宝されるでしょう。


実際にここ最近は、インボイス制度の影響で将来に不安を感じ、一人親方が会社に就職するケースが増えてきています。かつては会社に所属しており、独立して一人親方になったものの、会社に再就職したというケースも珍しくありません。将来のことを考えるなら、会社員になるという選択肢も真剣に検討してみるべきでしょう。


なお、施工管理の場合は、元請けで業務を行っている会社や1人1現場を基本としている会社に転職するのがおすすめです。なぜなら、一人親方として個人でやってきた方は、あまり会社に縛られず自分の裁量で動ける環境の方が働きやすいと考えられるからです。十分に情報収集を行い、一人親方時代に近い働き方ができる会社を選びましょう。




■まとめ



インボイス制度が導入されると、免税事業者のままでいても課税事業者になっても、一人親方は大きなデメリットを被ります。今までと同じ働き方をしていては、収入の減少はほぼ避けられません。


今後も一人親方として働き続けるためには、技術を磨くとともに営業活動も積極的に行い、単価のアップや受注数の増加につなげることが大切です。そして、より安定した働き方を求める場合は、会社員になる道もぜひ検討してみてください。





■美喜工務店なら、一人親方での経験を活かして建築のプロとしてキャリアアップできます!



美喜工務店は長野県を拠点に、店舗建築や戸建新築、リフォームを手掛けている創業45年の会社です。大型ホームセンターや量販店といった、商業施設の工事をメインに行っています(一部県外出張あり)。現在、施工管理者や現場作業員として働いてくれる方を募集しております。


弊社は元請けとしての業務が多く、1人1現場を基本としており、スケジュール管理など自分の裁量で働くことができるのが魅力です。これまで一人親方だった方も、美喜工務店なら快適に働けるでしょう。


未経験の方の採用も積極的に行っており、未経験者は入社時に資格がなくてもOKです。家が建つまでに必要な設計から内装まで、幅広い知識が身につくため、建築のプロとしてキャリアアップできる環境が整っています。資格取得をサポートする制度があり、取得にかかる費用は会社が負担しているため(上限10万円)、安心して資格の取得に集中することが可能です。


もちろん、すでに資格をお持ちの方は、入社時に相談の上、給与に反映させていただきます。これまでの経験や能力に見合った待遇をご用意いたしますので、ぜひお話をお聞かせください。


未経験から一流の施工管理を目指したい方、さらにスキルを磨きたい経験者の方、そして一人親方として長く活躍してきた方、どなたでも大歓迎です。興味のある方はお気軽にご連絡ください。皆さんと一緒に働ける日を楽しみにしています。


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