9割が知らない「仕上げ」の将来性。2級建築施工管理技士の種別による年収とキャリアの違いを徹底解説

建設業界で専門家としての一歩を踏み出す決意を固め、「2級建築施工管理技士」の資格取得を目指そうと考えたとき、多くの人が最初の壁に直面します。それが、どの「種別」を選ぶか、という問題です。


一口に施工管理と言っても、その領域は「建築」「土木」「管工事」「仕上げ」など、多岐にわたります。書店で参考書を手に取ってみても、専門用語が並び、それぞれの仕事の具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。「とりあえず『建築』が一般的なのだろうか」「新しくできた『仕上げ』って、一体何が違うんだろう」そんな風に、一人で頭を悩ませてはいないでしょうか。


この種別選びは、単に試験の科目が変わるというだけの話ではありません。実は、あなたがこの先どんな技術者になり、どのようなキャリアを歩んでいくのか、そして5年後、10年後の市場価値や年収にも大きく関わってくる、非常に重要な「人生の分岐点」ともいえる選択なのです。


もしあなたが今、どの道に進むべきか確信が持てずにいるのなら、少しだけ足を止めてみてください。この先を読み進めることで、それぞれの種別の本当の価値と、あなた自身の未来像が、きっとクリアに見えてくるはずです。




■ 一目でわかる!2級建築施工管理技士 全6種別の仕事内容と試験範囲

まずは、全体像をつかむことから始めましょう。2級建築施工管理技士の資格は、現在6つの専門分野に分かれています。それぞれの仕事内容を、できるだけ分かりやすい言葉で紹介しますので、自分がどの分野に興味を惹かれるか、想像しながら読み進めてみてください。



・建築

建物の骨組みをつくる仕事、と考えるとイメージしやすいでしょう。鉄筋コンクリートのビルやマンション、木造の住宅など、建物が完成すれば見えなくなる部分を、図面通りに正確につくり上げていく役割を担います。建物の安全性を根幹から支える、非常にダイナミックで責任の大きな仕事です。



・土木

道路や橋、トンネル、ダムなど、私たちの生活に欠かせない社会の基盤(インフラ)をつくる仕事です。スケールが大きく、地図に残るようなプロジェクトに携わる機会も少なくありません。自然を相手にすることも多く、測量や地盤に関する幅広い知識が求められます。



・管工事

建物の中の「流れ」を司る仕事です。私たちが快適に過ごすための空調設備や、キッチン・トイレなどの給排水設備、ガス管などを、建物内に適切に配置し、つなぎ合わせていきます。人々の健康や快適な暮らしに直結する、縁の下の力持ちといえる存在です。



・電気通信工事

照明やコンセントといった電気設備から、インターネットや電話などの通信設備まで、建物に神経や血管を通わせるような仕事です。現代の建物はあらゆるものが電気で動いているため、その重要性はますます高まっています。専門性が高く、常に新しい技術を学ぶ姿勢が求められます。



・造園

公園や庭園、街路樹、ビルの屋上緑化など、私たちの暮らしに潤いを与える「緑の空間」をつくる仕事です。植物に関する知識はもちろん、景観を美しくデザインするセンスや、土木・排水の知識も必要とされます。


・建設機械

ブルドーザーやクレーン車といった、工事現場で活躍する重機のスペシャリストです。機械の整備や点検、安全な操作計画の立案などを担当し、工事全体の効率と安全を支えます。




■ 2021年度再編の真意とは?「建築」と新設「仕上げ」どちらを選ぶべきか

さて、6つの種別のうち、特に多くの人が悩むのが「建築」と、2021年度から新しく設けられた「仕上げ」の違いではないでしょうか。もともとは「建築」という一つの資格の中に含まれていた分野ですが、なぜわざわざ分けられたのでしょう。その背景には、建設業界と社会の大きな変化があります。


かつて、日本は新しい建物を次々と建てる「新築の時代」でした。この時代に求められたのは、建物の骨格を力強く、効率的につくり上げる技術でした。これが、従来の「建築」資格が主に担ってきた役割です。


しかし今、社会は「すでにある建物を、より長く、より快適に使い続ける」という時代へとシフトしています。古くなったマンションを現代の暮らしに合わせて再生するリノベーションや、オフィスの内装を刷新して働きやすい環境をつくる改修工事の需要が、急速に高まっているのです。


このような工事で中心的な役割を果たすのが、まさしく「仕上げ」の専門家です。



・「建築」は建物の骨格をつくるプロ

建物の基礎や柱、梁といった構造部分を担当します。建物の強さや安全性を根幹から支える、いわば人体の「骨格」をつくる仕事です。大規模な新築プロジェクトで、その手腕が発揮されます。



・「仕上げ」は建物の価値を最終決定するプロ

壁紙や床材、塗装、防水、外壁など、人々の目に直接触れ、心地よさやデザイン性を決定づける部分を担当します。いわば人体の「皮膚」や「表情」をつくる仕事であり、建物の資産価値や魅力を最大限に引き出す役割を担います。


どちらが優れているという話ではありません。ダイナミックな構造物をつくりたいのか、それとも人々の暮らしに寄り添い、空間の質を高めたいのか。この制度再編は、私たちに「どんな専門家になりたいのか」を、より深く問いかけているのです。




■ 施工現場のプロはこう見る!資格が活きる具体的なプロジェクト事例


資格の知識は、実際の現場で使われてこそ、本当の価値を発揮します。ここでは、総合的に建設を手がける会社の視点から、各種別の技術者たちがどのように連携し、一つの建物を創り上げているのか、具体的なプロジェクトを例に見ていきましょう。



・大型商業施設の新築プロジェクト

巨大な商業施設をゼロから建設する場合、まず活躍するのが「土木」の技術者です。広大な土地を造成し、建物を支えるための頑丈な基礎を築きます。その後、プロジェクトの主役は「建築」の技術者へと引き継がれます。設計図に基づき、巨大な鉄骨を組み上げ、建物の骨格を形づくっていきます。同時に、建物内では「管工事」や「電気通信」の技術者が、空調や配線といった生命線を隅々まで張り巡らせます。そして、施設の顔となる内装や外装を手がけるのが「仕上げ」の技術者です。お客様が心から買い物を楽しめるような、魅力的で安全な空間を創り出す、プロジェクトの最終ランナーです。



・マンションの大規模修繕プロジェクト

多くの人が暮らすマンションでは、十数年に一度、大規模な修繕工事が行われます。ここで中心的な役割を担うのが「仕上げ」の技術者です。古くなった外壁のタイルを張り替えたり、屋上の防水をやり直したりすることで、建物の寿命を延ばし、資産価値を維持します。また、「管工事」の技術者は、劣化した水道管やガス管を新しいものに取り替え、住民の安全な暮らしを守ります。新築とは異なり、人々が生活しているすぐ隣で工事を進めるため、技術力だけでなく、住民への細やかな配慮も求められます。


このように、一つのプロジェクトは、様々な専門分野を持つ技術者たちの連携プレーによって成り立っています。特に、新築からリフォームまで幅広く手がける地域密着型の工務店などでは、「建築」と「仕上げ」両方の知識を持つことで、より多角的な視点からプロジェクト全体を見渡せるようになり、キャリアの幅も大きく広がっていくでしょう。




■ 5年後、10年後を見据えて。後悔しないためのキャリアパス別おすすめ種別


ここまで各種別の違いを見てきましたが、最終的に大切なのは「あなたがどんな未来を描きたいか」です。ここでは、いくつかの代表的なキャリアの志向性ごとに、おすすめの種別とその理由を考えてみましょう。



・地図に残るような、大規模プロジェクトを動かしたい

このタイプの方には、「建築」や「土木」が向いているかもしれません。スーパーゼネコンと呼ばれるような大手建設会社に入社し、超高層ビルや巨大な橋梁といった、社会のシンボルとなるような構造物づくりに挑戦できます。プロジェクトの規模が大きい分、動かす予算や関わる人の数も多く、強いリーダーシップとマネジメント能力が求められる世界です。一つのプロジェクトに数年単位で関わることも珍しくなく、チームで巨大な目標を達成することに、大きなやりがいを感じられるでしょう。



・専門性を極め、リノベーションの匠になりたい

自分の手で空間を生まれ変わらせることに喜びを感じるなら、「仕上げ」が最適です。リフォームやリノベーションを専門とする会社で、設計から施工管理まで一貫して担当し、お客様の夢を形にする仕事です。お客様との距離が近く、感謝の言葉を直接聞ける機会も多いのが魅力です。経験を積めば、独立して自分の事務所を構えるという道も拓けてきます。センスと技術を磨き続け、唯一無二の価値を提供したいと考える人にぴったりのキャリアです。



・地域に根ざし、人々の暮らしを幅広く支えたい

特定の分野に特化するよりも、新築から修繕、小さなリフォームまで、幅広い経験を積みたいという方には、地域密着型の工務店などが活躍の場となるでしょう。この場合、「建築」と「仕上げ」の両方の知識が非常に役立ちます。また、「管工事」や「電気通信」の資格も併せて取得すれば、住宅に関するあらゆる相談に応えられる「住まいのプロフェッショナル」として、地域の人々から頼られる存在になれます。安定した環境で、着実にスキルアップしたい方におすすめです。


あなたの理想の働き方は、どれに近いでしょうか。もし、自分の適性や将来について、もっと深く考えてみたいと感じたら、一度、現場で働くプロの話を聞いてみるのも良いかもしれません。


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■ まとめ:最適な種別を選び、市場価値の高い技術者への第一歩を踏み出そう


ここまで、2級建築施工管理技士の種別の違い、特に「仕上げ」の将来性について、様々な角度から見てきました。


かつて主流だった「建築」が建物の骨格を担う専門職であるのに対し、「仕上げ」は、リフォームやリノベーション市場の拡大という社会の変化を背景に、建物の最終的な価値を決定づける、極めて将来性の高い専門職であることが、お分かりいただけたかと思います。


しかし、最も大切なことを忘れないでください。どの種別を選ぶにしても、それはゴールではなく、あなたの長いキャリアにおける、ほんの始まりに過ぎないということです。資格は、あくまで専門家としてのキャリアを歩むための「入場券」のようなもの。本当に大切なのは、資格取得後、どのような環境に身を置き、どのような実務経験を積んでいくかです。


特に、成長途中の若い技術者にとっては、多様な現場を経験し、先輩から実践的な指導を受けられる環境ほど、貴重な財産はありません。一つの分野だけでなく、様々な工事に携わるチャンスがある会社であれば、あなたの成長スピードは格段に上がるでしょう。


種別選びという最初の分岐点を、ぜひあなたの輝かしい未来へとつなげてください。応援しています。


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